《20回目》 体外受精50万円超2.7倍 10年間で不妊治療 高額化進む 2019.4.4 毎日新聞
不妊治療の1種である「体外受精」で1回あたり50万円以上かかった人の割合が約10年間で2.7倍に増え、治療費の高額化が進んでいるとの調査結果をNPO法人がまとめた。約2割の人が総額で300万円以上を払っており、治療費負担が増している。
新しい検査や薬剤が登場した影響で、費用がかさんでいる可能性がある。
たしかに、新しい検査や薬剤が登場しています。
私が治療していたころは、AMH検査※1もなかったですし、ERA(子宮内膜着床能検査)※2や子宮内フローラ検査※3などもありませんでした。タイムラプス※4を使って卵の成長を見守る技術も最近の事ですし、それをお願いすると当然のように費用が掛かります。
1回の体外受精の成功率を上げようと、その周期にはレーザー治療や鍼灸、漢方薬などをいれるとなると(本当は続けた方がいいものばかりですがお金が続かないから採卵周期のちょっとまえからやる、その周期だけやるという方も多いです)出費はかさむ一方です。
そしてまじめな方が多いからか、医師から進められるとそれを受けなければと思ってしまわれる方が多いようです。もちろん選択肢はご自身でとは言われるのですが、出来る検査や治療なのにしなかったからと言って後悔したくない、と受けている方が多いようです。
実際にクライエントさんたちとお話していると、治療費負担はふえているなと実感します。
そしてお金を理由に、治療のやめどきを考えているかたもまた増えていらっしゃる気がします。
いくら、「治療中は金銭感覚がなくなる」とはいえ、生活をしていく中で治療に使えるお金を考えていかなくてはなりません。
「どうやって治療をやめたらいいのかわからない」と言われる当事者の方も多いので、経済的な理由で、治療をあきらめるというのも一つの選択肢かもしれません。
ただ、経済的な理由での治療の断念ということは悔しい思いも残りそうです。
不妊治療費の高額化は、しかたのないものでしょうか。
※1 AMH検査 血液検査によって、今現在の卵巣の状態を図るものです。卵は産まれたときに原細胞として卵巣に備わっており、それが少しずつ排卵して減っていきます。血液中のAMHの数値を図ることで、卵巣機能の残り具合・予備能を図る事が出来ると言われています。ただこの数値は卵の質を図ることはできません。
※2 ERA(子宮内膜着床能検査) 子宮内膜には胚を受け容れる時期があると言われています。それを「着床の窓」というのですが、それを子宮内の液の遺伝子検査によって図るものです。
※3 子宮内フローラ検査 最近の研究で子宮の中にも、善玉菌、悪玉菌がいて善玉菌が多いと妊娠・出産率が高くなるという研究結果が出ており、それを検査して少ない場合は治療するという方法も行われだしています。
※4 タイムラプス 一定間隔で受精卵の写真を撮り、その成長具合を確かめることで、胚の機能を判別する設備です。
妊娠するというプロセスにはまだ未解明の事が多く、なかでも「良い受精卵が着床しないのはなぜか」ということはいろいろな研究で少しずつ明らかになっているのが現状です。研究結果が発表された段階で、可能性の一つとして不妊治療に取り入れられることも多く、そうやって確かめられながら進んでいるのが高度生殖医療の分野でもあります。